昼休み

西伊豆にひとりで暮らす祖母に電話をかけた。コール音が続く。耳が遠かったり動作がゆっくりになっている祖母が電話に出るまでは時間がかかるだろうと、長くコールし続けた。どうせ急ぐ用事もないのだ。

 

何十コール目かでもしもし?と祖母のゆったりした声が聞こえて、わたしだよーと名前を伝えると、あら!聞いたことある声だねえとすぐにうれしそうなまあるい声が返ってきた。

 

ちょうど近所の中華屋で、焼きそばを買って帰ってきたところだったという。わたしの大好物でもある、あの店の焼きそば。具はキャベツのみというおそろしくシンプルなのに、どういうわけだか箸が止まらない美味しさなんだ。子どもの頃から大好き。いいなあ、わたしも食べたいな。

 

◯◯ちゃんは頑張り屋さんだからねえ、無理しないでね。と言ってくれた。ばあちゃんは昔っからそうだ。頑張り屋さんだってずっと言い続けてくれている。どうしてそう言えるんだ。一緒に暮らしているわけでもない、話をしたのだって久しぶり。最後に会ったのは4年も前だ。

 

そんな風に言ってもらえるような人間なんだろうか。ちゃんと頑張れているだろうか。無条件の祖母の愛情がおおきくてあたたかくて、涙が出た。

 

今は会いにいけないけど、落ち着いたら会いにいくから、それまで元気でいてね。と伝えて電話は終わった。5分にも満たない出来事。こんな短い時間であたたかくなれるんだ。どうして今まで電話しなかったんだろう。

 

祖母が思ってたより元気そうな声をしていたこと、今会いにいけないこと、頑張り屋さんと言ってもらえたこと。色んな想いに浸って、すぐに仕事に戻る気にはなれなかった。